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2020年3月3日に株式会社イワタより発売した「イワタ福まるご」。
これまでになかった、有機的な曲線で構成された新しい丸ゴシック体です。
ノーマルな丸ゴシックでは物足りないが、ポップ書体では強すぎる、そんなときの新しい選択肢になれる書体。見出しから、しっかり文字組までこなせます。
制作にかかわった同社デザイン部へ、制作秘話などお話を伺いました。
6年の歳月をかけ、満を持して発売になった「イワタ福まるご」の世界をご覧ください。
有機的な曲線で構成された、これまでにないシルエットの丸ゴシック体。
細〜太の5ウェイトの展開で、本文から見出し、しっかり文字組までこなせます。
印刷 | Web(画像) | ゲーム | 映像 | ロゴ |
〇 | 〇 | △※1 | △※1 | 〇※2 |
※1 別途、商用二次契約が必要。 ※2 商標登録可。フォントのタイプフェイス及びプログラムの独占使用は不可。 |
イワタ福まるご StdN
有機的な曲線で構成された、これまでにないシルエットの丸ゴシック体。
「もっちりぽってり」
見出しから、しっかり文字組までこなせます。
● 1ウェイト | |
標準価格 | ¥15,400 (税込) |
● L〜E 5ウェイトセット | |
標準価格 | ¥61,600 (税込) |
デザインポケットでは、「イワタ福まるご」の制作にかかわった同社デザイン部にお話を伺いました。
── 誕生のきっかけ、影響を受けたもの
本多が入社間もない頃、イワタの前身である岩田母型の活字見本帳を整理をする中で、一風変わった丸ゴシックに出会いました。
ちょっと不格好にもみえる骨格と優しい丸さがかわいらしく、一目惚れしたのが始まりです。
関連資料がないか、タケノコ・デザインルームの竹下氏 (以下、竹下氏) に相談したところ、森川龍文堂 (代表の森川健市は、のちの岩田母型の大阪支店長) の見本帳を紹介してもらいました。
こちらには太い見出し書体もあり、これらの特徴を掛け合わせたファミリー展開での制作を提案しました。
また、イワタにはオールドスタイルの明朝と角ゴシックはありましたが、丸ゴシックはなかったため、そのことも制作の後押しとなっています。
── 書体名の由来
初めてお披露目した展示会でノベルティにぽち袋をつくった際、書体の特徴がわかる「福」の字をデザインに盛りこみました。
ポジティブな言葉であり「ふくまるご」という音の響きもよいことから、それが書体名にも採用されました。
見た目の印象もやわらかく「まるご」はひらがな表記にしています。
── 構想から制作まで
2013年に見本帳を見つけてから水面下で試作を進めつつ、本格的に始動したのが2016年の1月です。
構想に2年半、制作に4年と、計6年以上かかっています。
── 複数ウェイトの制作
はじめから複数ウェイトの開発を想定していたため、太いウェイトと細いウェイトを同時に着手しました。
まずは見本帳の太さを参考にし、そこから社内の他の書体との比較を重ね、現在のLからEの5ウェイトに落ち着きました。
── 制作メンバーと作業分担
見本帳の相談をしたところから竹下氏が加わり、本多のスケッチを元に竹下氏と意見を出し合いながら基本的なエレメントを作り込むという流れで進めました。
デザインの方向性が決まると基本漢字の約400字を2名で分担して作成、2017年から坂口も加わり、3名で必要字種の一式を揃えました。
── 一番のこだわりのポイント
【書体全体のデザインの特徴】
現代のデジタルフォントで元となる活字の雰囲気を表すために「低めの重心」と「ユニークな丸み」を活かすことに重点を置き、とくに後者の表現に注力しています。
丸ゴシックと言っても単に先端や転折部が丸いだけではなく、1画1画に太細の抑揚をつけ、口のパーツは外側にふっくら広げるなど、単純な直線が極力生じないようにしています。
また、起筆や収筆が他の線と接する場合にも、インクにじみのようなわずかなカーブをつけています。
エレメントで特徴的なのは、短くぐっとこらえたようなハネや、起筆を細く終筆を太くし強弱をつけた短めの点です。
このような個性的なエレメントをもちながら骨格は奇をてらわずベーシックであることで、親しみやすいのに今までにない表情の丸ゴシックに仕上がっています。
【漢字 かなカナ 英数字の字面や骨格・エレメントの特徴】
先に挙げた以外では、口は外に膨らんでいるのに対し「円」や「月」などはウエストをくびれさせメリハリをつけています。
基本的なこととしては、LからEの太さにかなり幅があるので、細いウェイトほど字面を小さくする、重心や点画のバランスを揃えるなど、5ウェイトがきちんと1つのファミリーに見えるよう配慮しています。
ひらがなやカタカナはオールド系ということもあり小ぶりに設計しました。骨格は漢字と同様に、本文にも耐えうる汎用性のあるデザインを意識しています。
その骨格を決めるところから新規に書き起こしていますが、カタカナの「ロ」の下部を少しすぼめる、「ホ」の縦画をハネないなど、活字の味も加えています。
欧文も一から起こし、手書き感がありながら使いやすいものを目指しました。例えば、先端の抑揚が均一では弱く感じたので、Lの収筆や小文字の縦画などを斜めにして動きを出しています。
ささやかなこだわりとしては、坂口が手がけた天気マークを5ウェイト並べてみてほしいです。
── 制作で一番苦労したところ
本書体の特徴である線の抑揚とハネの形状です。
抑揚は弱いと見えず、強いと墨だまりのようになってしまいます。太いウェイトで画数の多い字では、抑揚を強調しながらも隙間が埋もれすぎないような工夫が必要でした。
思い切った短いハネは元の見本帳内では長さが様々で、どのあたりのイメージに近づけるか、今のデザインに落ち着くまで試行錯誤がありました。
── 特徴が一番引き出せる一文字
よく聞かれますが選ぶのは難しいです。線の込み入った字でも「一」でも福まるごだとわかります。
強いて言えば「山」「見」「力」などのシンプルな字ほどエレメントの特徴がわかりやすいと思います。
── 使ってほしい・想定している利用用途
ポスターやパッケージなどの目を惹く見出しはもちろん、細いウェイトは長文での可読性もあり、幅広い活躍を期待しています。全てのウェイトに抑揚が効いているので、細いウェイトを大きく使っても他の書体との違いがでて面白いかもしれません。
ノーマルな丸ゴシックでは物足りないが、ポップ書体では強すぎる、そんなときの新しい選択肢になれる書体ではないでしょうか。
本多 育実 (左)
1990年 | 東京生まれ 埼玉育ち |
2013年 | 武蔵野美術大学 造形学部 視覚伝達デザイン学科卒業 |
同年 | 株式会社イワタ入社 デザイン部所属 |
坂口 ゆかり (右)
1994年 | 和歌山県出身 |
2017年 | 京都精華大学 デザイン学部 ビジュアルデザイン学科卒業 |
同年 | 株式会社イワタ入社 デザイン部所属 |
竹下 直幸 (中央)
タケノコ・デザインルーム |
「竹」「イワタUD新聞明朝」「みんなの文字」などをデザイン |